「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」が、国立新美術館 企画展示室1Eで、2018年2月14日(水)から5月7日(月)まで開催される。福岡展は、九州国立博物館で、2018年5月19日(土)から 7月16日(月・祝)まで。名古屋展は、名古屋市美術館で、2018年7月28日(土)から 9月24日(月・祝)まで開催。

 

この記事では、見どころや、展覧会の内容、また本展覧会の価値について紹介をしていく。

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見どころを紹介

1「至上の印象派コレクション」

ピエール=オーギュスト・ルノワール《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》
©Foundation E.G. Bührle Collection,Zurich (Switzerland)Photo: SIK-ISEA, Zurich (J.-P. Kuhn)

傑作中の傑作が揃うビュールレ・コレクションの印象派・ポスト印象派の作品は、その質の高さゆえ世界中の美術ファンから注目されている。絵画史上、最も有名な少女ともいわれるルノワールの《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》とセザンヌの《赤いチョッキの少年》の2点は両巨匠の「最高傑作」として知られ、絶対に見逃せない作品だ。

ポール・セザンヌ《赤いチョッキの少年》
©Foundation E.G. Bührle Collection,Zurich (Switzerland)Photo: SIK-ISEA, Zurich (J.-P. Kuhn)

他にも、どこかで見たことのある、聞いたことのある作品ばかりが揃い、ドガ、マネ、ルノワール、ファン・ゴッホ、ゴーギャン、モネ、セザンヌ、マティス、ピカソと、あまりにも豪華すぎる作家たちがこの展覧会で競演する。

2「出品作のおよそ半数が日本初公開」

ビュールレ・コレクションには、モネ、ファン・ゴッホ、セザンヌなどの傑作が数多く含まれており、今回、近代美術の精華ともいえる作品全64点を展示するが、その半数は日本初公開。

クロード・モネ《睡蓮の池、緑の反映》
©Foundation E.G. Bührle Collection,Zurich (Switzerland)Photo: SIK-ISEA, Zurich (J.-P. Kuhn)

なかでもモネの代表作の一つである《睡蓮の池、緑の反映》は、ビュールレがパリ郊外のジヴェルニー(モネが一連の睡蓮作品を描いた場所)に実際に足を運び、自分の目で見て購入を決めた作品で、これまでスイスから一度も出たことのなかったおよそ高さ2メートル×幅4メートルの大作だ。日本でまだ見たことのないモネの「睡蓮」。門外不出といわれたモネの最高傑作をぜひその目で見てほしい。

展覧会概要

■肖像画

名作への期待に胸膨らませて会場を訪れた来館者を先ず迎えるのは、肖像画の数々。17世紀のオランダを代表
する画家フランス・ハルスの傑作、《男の肖像》にはじまり、友人シスレーをモデルにルノワールが描いた若き日の半身像など、各時代を彩る名人たちの筆による個性豊かな肖像画が並ぶ。

 

フランス古典主義の完成者アングルが愛情を込めて描き出した妻の肖像《アングル夫人の肖像》は日本初公開だ。

■ヨーロッパの都市

この章ではヴェネツィア、ロンドン、パリといったヨーロッパの大都市を描いた作品が並ぶ。ビュールレ・コレクションの中核は、19世紀後半の印象派、ポスト印象派の作品だが、大学で美術史を学んだビュールレは、自らのコレクションにも歴史的な広がりを与えたいと考えていた。

 

18世紀前半のカナレットが描いた写真のようなヴェネツィアの風景。それから百数十年後の、色彩の中に全てが溶け合うようなモネのロンドンの風景。二つの作品は風景表現の歴史と画家の個性のあり方を明確に教えてくれる。

■19世紀のフランス絵画

この章では、ドラクロワやシャヴァンヌなど、古典的な主題を取り上げながらその様式で近代への扉を開いた画家たちや、しばしば近代絵画の父と称せられるマネを中心に紹介。

■印象派の風景―マネ、モネ、ピサロ、シスレー

カミーユ・ピサロ《ルーヴシエンヌの雪道》
©Foundation E.G. Bührle Collection,Zurich (Switzerland)Photo: SIK-ISEA, Zurich (J.-P. Kuhn)

印象派の画家たちは、肖像、静物、風俗など様々な主題に挑戦したが、最も熱心に取り組んだ画題は「風景」だろう。パリ近郊、セーヌ河畔の豊かな自然を舞台に繰り広げられる作品の数々は、描かれた時の光のきらめきや風のささやきを感じさせるほど、生き生きと表現されている。

クロード・モネ《ジヴェルニーのモネの庭》
©Foundation E.G. Bührle Collection,Zurich (Switzerland)Photo: SIK-ISEA, Zurich (J.-P. Kuhn)

クロード・モネ 《ジヴェルニーのモネの庭》では、シャクヤク、ゼニアオイ、バラやアイリスなど、色とりどりの花を愛でるモネの義理の娘、シュザンヌ・オシュデが描かれている。点描のような細かい筆触からは、印象派絵画の新たな展開がうかがえる。

■印象派の人物―ドガとルノワール

エドガー・ドガ《リュドヴィック・ルピック伯爵とその娘たち》
©Foundation E.G. Bührle Collection,Zurich (Switzerland)Photo: SIK-ISEA, Zurich (J.-P. Kuhn)

印象派の画家の多くは風景や静物を得意としたが、ドガとルノワールの二人は主に人物に力を注いでいる。そして人物を対象にしながら、そのポーズや動きに着目し、冷静なまなざしで一瞬の姿を画面に記録したドガに対し、ルノワールはモデルに寄り添うようにしてその生命の輝きを、豊かな色彩によって謳いあげた。

 

対照的な個性を見せる二人だが、長い伝統を誇る人物を中心に据えたその作品には、他の印象派の作家とは異なる、どこか古典的な趣が漂っている。

■ポール・セザンヌ

ポール・セザンヌ《パレットを持つ自画像》
©Foundation E.G. Bührle Collection,Zurich (Switzerland)Photo: SIK-ISEA, Zurich (J.-P. Kuhn)

ビュールレ・コレクションの印象派の傑作は数え上げるときりが無い。だが、中でも白眉と言えるのがセザンヌの充実したコレクション。6 点の出品作は、暗い情念を感じさせる初期のバロック的宗教画から、印象派の筆触を独自に展開させた風景画、最盛期の妻の肖像と自画像、キュビスムの先駆を思わせる最晩年の作品まで、作風の変遷を読み取ることができる。

■フィンセント・ファン・ゴッホ

フィンセント・ファン・ゴッホ《花咲くマロニエの枝》
©Foundation E.G. Bührle Collection,Zurich (Switzerland)Photo: SIK-ISEA, Zurich (J.-P. Kuhn)

セザンヌと並ぶポスト印象派の代表的画家ファン・ゴッホのコレクションも大変充実している。6点の出品作はこの画家の様式の変遷をたどるのに十分な多様性を見せているが、それが僅か6年の間に描かれたものと知るとき、驚きと戸惑いが私たちを襲うだろう。

フィンセント・ファン・ゴッホ《日没を背に種まく人》
©Foundation E.G. Bührle Collection,Zurich (Switzerland)Photo: SIK-ISEA, Zurich (J.-P. Kuhn)

炎の人と呼ばれるこの画家が、いかにその短い生涯を燃やし尽くして作品を生み出したのか、6点の作品が雄弁に物語る。

■20世紀初頭のフランス絵画

ポール・ゴーギャン《贈りもの》
©Foundation E.G. Bührle Collection,Zurich (Switzerland)Photo: SIK-ISEA, Zurich (J.-P. Kuhn)

19世紀後半のフランス絵画は、印象派やポスト印象派の画家たちによる造形的な探求が進み、20世紀のモダン・アートへの道が用意された。一方で、造形的な探求に飽き足らず、人間の内面に迫ろうとする画家たちも世紀末になると登場し、20世紀絵画のもう一つの方向性を示す。

 

この章では象徴派やナビ派、綜合主義などに分類される、ヴュイヤール、ボナール、ゴーギャンといった画家たちの、時にメランコリック、あるいは謎めいた作品の数々を紹介。

■モダン・アート

この章ではピカソやブラックなど、20世紀のモダン・アートを紹介。ビュールレ・コレクションの大半は1940年以降の10数年間に収集されているが、抽象絵画など当時の現代美術は含まれていない。コレクションの中で最も新しいものは20世紀初頭のフォーヴィスムやキュビスムなど、その後の絵画の急激な変貌を予兆するモダン・アートの一群の作家たち。僅かな時間の間に目まぐるしいほどの変化を見せる彼らの作品は、20世紀初頭の絵画革命の熱気を生き生きと伝えてくれる。

展覧会の価値とは

エミール・ゲオルク・ビュールレ(1950年頃)のポートレート
Photo: Foundation E.G. BührleCollection, Zurich (Switzerland)

まず始めに、セザンヌの肖像画のなかでも、もっとも有名な作品である《赤いチョッキの少年》と、絵画史上、最も有名な少女ともいわれるルノワールの《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》を有する、世界で最も優れたフランス印象派絵画のプライベート・コレクションである「ビュールレ・コレクション」を日本で見ることができる、という珍しい機会であることは間違いない。

 

あわせて、2020年にビュールレ・コレクションの所蔵作品は一括して、チューリヒ美術館に管理が移ることが決まっており、今回の展覧会は日本でコレクションの全貌を見ることができる最後のチャンスとなっている。

 

※これまでヨーロッパ以外へ所蔵品がまとまって貸し出されたことはほとんどなく、日本で紹介されたのは、ビュールレ氏の生誕100年を記念し、1990年から1991年にワシントン、モントリオール、横浜、ロンドンで開催された世界巡回展の1 回限りだ。

 

本展覧会で展示される傑作の数々を集めたのは、ドイツに生まれ、スイスで後半生をすごしたエミール=ゲオルク・ビュールレ(1890-1956)だ。学生の頃から美術に興味を持っていた青年は、第一次・第二次世界大戦を経て、美術とはかけ離れた世界で実業家として成功、富を築き、心の拠りどころとなる美術作品を集めていた。

 

ビュールレ・コレクションのプライベート美術館
Photo: Hans Humm, Zurich

時間を見つけては、チューリヒの邸宅の隣にある別棟で自身のコレクションをひたすら眺め、絵画の世界に浸っていたというビュールレ。彼の死後、その別棟は美術館として改築され、コレクションが一般公開されていたが、2008年に4点の絵画盗難事件以来、一般公開が規制されていた(その後、4 点は無事に戻された)。そして2020年には、ビュールレが生涯を通じ財政的支援を続けてきたチューリヒ美術館に、全てのコレクションが移管されることが決まっている。ビュールレのコレクターとしての視点が感じられるコレクションの全貌がみられるのはこれが最後。見逃せない機会だ。

開催概要

「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」

【東京展】

会場:国立新美術館 企画展示室1E〔東京・六本木〕

会期:2018年2月14日(水)~5月7日(月)
開館時間:午前10時~午後6時

(毎週金・土曜日、4月28日(土)~5月6日(日)は午後8時まで)
※入場は閉館の30分前まで
休館日:毎週火曜日(ただし5月1日(火)は除く)

観覧料(税込)

当日券 前売券/団体券
一般 1,600円 1,400円
大学生 1,200円 1,000円
高校生 800円 600円

・団体券は国立新美術館のみ販売(団体料金の適用は20名以上)
・中学生以下無料
・障がい者手帳をご持参の方(付添の方1名を含む)は無料
・前売券は2017年10月12日(木)~2018年2月13日

 

問い合わせ先(東京展)

TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)

 

【福岡展】

会場:九州国立博物館

会期:2018年5月19日(土)~7月16日(月・祝)

 

【名古屋展】

会場:名古屋市美術館

会期:2018年7月28日(土)~9月24日(月・祝)

 

公式サイト

URL:http://www.buehrle2018.jp/

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